ガンダム00「BEYOND」
多分ネタばれ。ガンダム日記。
OOがまとまってきた。
宇宙世紀系の
「ニュータイプへの覚醒という変革による人類の相互理解」
に近いまとまり方で進んでいってる気がする。
刹那の革新、トランザムバーストによって放出されたGN粒子を通じて月光蝶やサイコフレームの共振にも似た現象が発生し、戦場の人々の意思が会話を始める。
?サジとルイス
「僕たちは分かり合うことで、未来を築くんだ!」
と語りかけ続けるサジに対して取り付く島の無いルイス。
「その未来を奪ったのはソレスタルビーイングだ!!戦争を仕掛けたのも、世界を歪めたのも!!」
絡み合う00とルイスのMAに特攻してくる、敵MSを迎撃するためサジはついに自ら引き金を引く。
特攻は防ぎきれずルイスのMAは大破。気絶したルイスを保護してサジは戦場を離れる。
意識の戻ったルイスは旧劇場版エヴァのラストのような形相でサジの首を絞める。
薬物汚染で完全に侵食された表情のルイスは完全に正気を失っていた。ルイスは家族を失ったことによる憎しみを原動力として、恒久和平というマクロな大義の下にCBを叩くことだけしか考えられなくなっている「歪んだ」存在になってしまっているのが明確に示されたといったところ。
しかしサジの首を絞めるルイスは、その首に掛かったリングを目にし、涙を流し始める。そのリングはまだ争いを知らなかったかつてのサジがルイスに送ったリングだった。愛と憎しみの狭間で葛藤するルイスは発狂、悶絶の末昏倒する。
そして、ルイスを抱きかかえ嘆くサジの周りに粒子が舞い始める。GN粒子はルイスの意識をイノベイターの呪縛から解き放った。そんなルイスを黙って抱きしめるサジ。流れる「TOMORROW」。もう最高。
戦闘パートはそこそこにして、二人の接触に時間を割いたのは正解だと思う。
?九条とビリー
愛した九条に裏切られたビリーは、その憎悪によりルイスと同様倒錯し、自分の主体的な価値観を崩壊させイノベイターの標榜する人類の理想に傾倒していった。
そしてビリーは九条に24話でとうとう銃口を突きつけることとなった。
人類の未来を導く上位種であるイノベイターに隷属し、支配されることで人類は争いを無くして平和に、幸せに生きていける。自由が無い世界と言いテロを起こす反抗組織がいるが、一握りのエリートに導かれない完全なる自由の先にあるのはモラルの崩壊、そして滅びである。檻の中で守られ、限られた幸せを享受することが本当の平和なのだ。それを理解しようとせずに武力介入によって世界を混乱に陥れるCBは悪だ、と非難するビリー。
それに対して九条は、人類の未来は誰かに委ねるものではなく、自ら掴み取らなくてはならない。過去の過ちを払拭するためにもそれを背負った上で積み上げていかなくてはならないと主張する。
「どうして君はわかってくれないんだ・・・そうやって、いつも・・・!」
論戦が膠着し、ビリーの引き金が引かれようとした時、刹那の覚醒による散布された粒子が二人の心の声を通じ合わせる。
「ごめんなさい、ビリー。あなたの気持ちに気づいていながら、それに甘えて」
語らずに伝わる九条の心の声。
「やめろ!!僕は・・・恒久和平実現のために・・・!!」
銃口に顔を近づけ命を委ねる九条を前にしてビリーはうろたえ、最後はその銃を持った手を下げる。
かくして、自分の確固たる価値観でなく、憎しみよって立っていたビリーの大義は、最も単純な「愛」という幸せの前にあっけなく崩れ去ったのだった。
?マリーとアンドレイ
実父であるセルゲイ大佐を殺したアンドレイに対し、セルゲイを慕っていたマリーは憎悪を抱いていた。しかし憎しみの連鎖が命を消していく戦場にあって、マリーはその憎悪を許容へと変化させるようになる。
互いに機体が大破した後に粒子による交信ができるようになり、マリーはアンドレイに父殺しの真意を問う。セルゲイが戦場で妻を見殺しにして以降、息子のアンドレイは心を閉ざしていた。
「あなたはどうしてお父さんと、分かり合おうとしなかったの・・・?」
「あいつは母さんを見殺しにするような奴だ!信じられるか!あの男は何も言ってくれなかった!言い訳も、謝罪も!僕の気持ちなんてわかろうとしなかった!」
「自分のことを分かってほしかったのなら、なぜ大佐のことをわかろうとしなかったの?」
「なぜあの時言ってくれなかったんだ!?言ってくれなきゃ、何も分からないじゃないか!言ってくれなきゃ!!」
誘爆するMSからアンドレイを遠ざけるため、自分を貫いたアンドレイのMSをそっと突き放したセルゲイの最期を思い出し、嗚咽するアンドレイ。
小物とか狭量とか、散々な言われ方をしていたアンドレイだが、ここに来て彼は最も親近感のあるセリフを言ってくれたと思っている。
前期テーマのUVERWORLD「儚くも永久のカナシ」に凝縮されたこの作品のエッセンスを地で行くキャラだったのではないか。
愛が愛を 重すぎるって理解を拒み 憎しみに 変わってく前に
言ってくれなければ、何も分からないのである。現実ではGN粒子もないし、ニュータイプのように心と心で分かり合うことなんて不可能だ。僕らオールドタイプは言葉で伝えるしかない。うまく伝えることができないままに、それぞれの心の中で愛や憎しみは作られ、それに突き動かされて生きていく。それはSFと比較すれば限界に見える。
しかし、そんな空想と比べて絶望するのではなく、僕は現実で人間がわかりあうためには言葉がいかに重要なツールであるかを再確認できた、ということで今週のOOをまとめたい。
相互理解と許し合いには「言葉」が必要なのだ。
CBの武力介入行動は、矛盾を孕みつつも世界の統合を促し、人類の意思を統一することにあった。
それは争いの火種を抱えたまま外宇宙に出ることを避けるためだという。人類は、分かり合える種に変わらなくては未来を継ぐことができない。いずれ来る異種との対話のためにも、人類は変革しなくてはならないのだ。
というのが、今回最期で明かされたイオリア計画の全貌ですが、その限界を超える変革を意図して「BEYOND」というタイトルがつけられたのではないか・・・とか思ったりしてます。憎しみの連鎖を超えた対話、許容を目指して、とか。
いよいよ次週最終回か!?
楽しみ!