新・時の軌跡~yassuiのブログ~

旅の話、飯の話、リビドーの話。

黒部の太陽

土日に録画しておいた「黒部の太陽」を見た。

当時、世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘を描いており、過去石原軍団によって舞台化もされた作品。




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以下ウィキより、黒部ダムについて。

黒部ダムは、富山県東部の黒部川上流に建設されたアーチ式コンクリートダム。発電に利用する水を確保することを主目的として関西電力によって建設された。ダムの高さ(堤高)は186mで日本一を誇り、現在でも破られていない。総貯水容量は約2億tで北陸地方で屈指の黒部湖(くろべこ)を形成する。日本を代表するダムのひとつである。総工費は建設当時の費用で513億円。これは当時の関西電力資本金の5倍という金額である。作業員延べ人数は1,000万人を超え、工事期間中の転落やトラック・トロッコなどによる交通事故等による殉職者は171人で、いかにダム建設工事が苦難を極めたのかがうかがえる。









高度経済成長期、高まる電力需要に応えるためにかつてない巨大ダム建設に踏み切った関西電力と、その工事の中でも難工事と呼ばれたトンネル掘削を請け負った熊谷組の物語で、上り坂の日本における仕事への価値観が凝縮されているドラマだった。

中でも香取慎吾の演じた熊谷組倉松班の親方、倉松仁志と、小林薫の演じた関西電力黒四建設事務所次長の滝山薫平の生き様が印象的だった。











倉松班親方の倉松は郷里の仲間たちと黒部ダムのトンネル掘削に関わることになるが、それは予想を上回る難工事となった。

当初は最新鋭の機械を用いて、トンネル掘削の工事は順調に進められた。

しかし掘削中、突然地盤が盛り上がり、鉄製の支柱は押し曲げられた。トンネルの先端が崩れ落ちて、土砂を押し出し、摂氏4度という手の切れるような冷たい地下水が猛烈な勢いで噴出し、たちまち坑内を水浸しにした。

これが、岩盤の中で岩が細かく割れ、地下水を溜め込んだ軟弱な地層「破砕帯」だった。そして倉松は部下の沢井甚太を失うこととなる。

その後も、壁面から湧き続ける水は工員を疲労させると同時に、軟弱な地層を掘り進む以上落盤の危険が常に伴う。手作業による慎重な掘削は日に7センチしか進まず、倉松たちの精神は限界を迎え、仲間内でのいさかいも日常茶飯事となった。

工事の危険性が報道されることも増え、心配した郷里の親族から毎日のように届く「チチ,ハハキトク」の電報。

それを受け取り、郷里に帰ったまま帰ってこない工員も増える中、倉松は母が事故で負傷したという電報を破り捨てて作業を続ける。

倉松は戦中のことを思い出していた。

勝つか負けるかしかない戦場においては、一瞬の判断ミスが命取りとなった。今の相手は自然だ。慎重に判断することに越したことはないが、気持ちが死んだ時点で負けが決まることとなる。

「戦争中に俺の肩を銃弾が貫通したことがあった。俺はどうやら貫通と縁があるらしいな」

武骨な男の、仕事にかけるプライドがにじみ出た言葉だった。











関西電力黒四建設事務所次長の滝山薫平は工事全般のマネージャーの立場で事業に携わる。資材調達、人事、工程決定など多くの仕事をこなす彼は多忙を極めていた。

一方郷里の三女光子:志田未来白血病に冒され余命幾ばくという状態だったが、妻ふじ江:風吹ジュンは頑なにそれを滝山に伝えようとしなかった。

「黒部で大変な思いをしているお父様に、心配をかけるわけにはいかないの!」



ふじ江につめよる長女幸江:綾瀬はるか

「他に何を心配するの?家族以外に他に何を心配するの!?」



幸江の頬を張るふじ江。

「世の中のためにダムを作ることがお父様の仕事!それを否定することは決して許されない。私はお父さんの犠牲になったなんてこれっぽっちも思わない!私はお父さんのいない分もこの家庭を支えることを誇りにして生きているわ!お父様を苦しめるようなことがあったら許しませんから!!」



しかし幸江によりその話は滝山の耳に入ることとなり、滝山は光子の元に一日だけ帰るが、その後も滝山は黒部で働き続けた。



倉松の粘り強い掘削により破砕帯を突破した後は、急ピッチで機械掘削が進み、トンネルは無事開通に至ることとなる。その後も滝山はダム関連の仕事に従事することとなるが、光子の命は消えてしまう。



葬儀の後、光子の部屋でうつむく滝山に、幸恵は一枚の絵を見せる。

それは、かつて滝山が病床の光子と会ったときに語った仕事の話をもとに、光子が描いた黒部ダムの絵だった。滝山に会いたがっていた光子だったが、最期まで滝山の仕事の成功を願い、その気持ちを絵に込めて残して逝ったのだった。

まるで光子がダムを見下ろして描いたかのような美しい絵を見た滝山は、畳に突っ伏してただ嗚咽し続けた。







仕事に集中し、家庭を顧みることもままならない日本の父親が抱えてきたカルマは本当に深いものだと言わざるを得ない。

多忙な仕事に従事する父親ならなおさらであると思う。彼らは仕事ややりがい、誇りを手に入れるためにきっと何かを犠牲にしてきたのだ。

しかしそれが成立するためには、支えてくれるよきパートナーが必須である。

滝山の場合は、ふじ江他家族が滝山の仕事に理解を示し、協力したことが何よりの幸せだったに違いない。実際はこれが上手くいかない家庭も珍しくはないだろう。



労働人口が減り、夫婦共働きが当たり前になるであろうこれからの時代ではこういった形とはまた別の、家族の形に関する問題が生まれるのかもしれないが、かつてこういうことがあった、ということは忘却せずに意識の片隅においておきたいと思う。


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最近はうすっぺらい漫画の実写化とか三流ラブコメばかりで、見る気もしないドラマばかりだったけど、本気出せばこんだけどっしりとしたいい作品が作れるんだなと、見捨てかけていたTVに光明を見出すことができた5時間だった。

まあこれは原作がいいのかな。