障子張り職人と、H中ライダー
イブはみんなおおはしゃぎで、当日は地味というのがクリスマスの常ではあるけれども、昨日おとといが「動」ならば今日は「静」な一日でありました(望まない形での動ではあったが)
昼過ぎまでぐっすりと眠りイブにバカ飲みしてへたった脳みそを休め、以前約束していた階下の祖母の家の障子の張替えに精を出すことにした。
なにせ20年来紙を替えていない障子で、生前祖父が煙草を吸っていた部屋であることもあり、その黄ばみっぷりは苛烈を極めていた。しかしいつかはやらねばならぬ作業である。年末大掃除にかこつけて片付けてしまったほうが後で楽だろう。
近くのオリンピックに車を出して障子紙やのり、大掃除グッズなどをたくさん仕入れ、午後2時から作業をスタート。
なにやら雪見障子というスライドするタイプの障子であることに加え、部屋の2面に障子が使われていることもあり、全部で張り替える面が16面も存在するという悲劇。妹、祖母と3人で作業を分担する。
作業は、水で古い障子紙をはがし、雑巾で枠をふき取る。そのあとに枠にのりをつけながら新しい障子紙を貼り付けていく、という単純なものだが段階ごとにきっちりと根をつめて、カンペキに済ませなければならないため、ある種の神経が磨耗した。
そう、このような疲れ方をしたのは新聞でレイアウト作業をしていた時以来かもしれない。
レイアウトと同様に、作業に没頭すればあっという間に時間は過ぎるもので、6時を過ぎたころには全ての障子を張り替えることができた。
はがす時にいささか酸っぱい匂いすら漂わせた古い障子紙は、落ち着いた無地の紙に全て替わり、なかなかの達成感を味わうことができた。
障子紙が仕上がる頃、携帯が鳴った。
高校野球部時代の友人、H中である。
「今日ヒマ!?」
以前貸していたグランドコートを返却しに、荻窪まで来るという。
夜八時、クソ寒い荻窪駅前の花壇に、HONDAのハネウマを横に従えたH中が憮然とした表情で座っていた。
「今からお前の家行ってもいい?」
どこまでもぶっつけだが、幸いにも大掃除をしたばかりなので、部屋に客人が座るスペースもあるかな、と思い直したりして、彼を部屋に招きいれることにした。
結局彼は僕の部屋の中でコーラをこぼし、陳列物に関していくつか提言を残し、ぷよぷよとパワプロをして、小田和正の歌番組を見るからと言って帰っていった。
僕の部屋を出て、ブイブイと音を上げながら環八に乗っていった奴の後姿を見て、そうだ、思ったより僕は部屋に友達を呼んでいないのだな、と。まあそんなことに気づいた。一人暮らしでも無いし、そうそう呼ぶもんでもないのかもしれないけどね。
まあ、今日はそんなところです。
「静」ということで綺麗にまとまった一日だと、思います。