新・時の軌跡~yassuiのブログ~

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臓器移植法改正案とか海賊対処法案とか

臓器移植法改正案:「脳死は人の死」成立 0歳から移植可能 A案、参院で賛成多数



 臓器移植法改正案は13日午後、参院本会議で採決され、3法案のうち、脳死を一般的な人の死とする「A案」(衆院通過)が賛成138、反対82の賛成多数で可決、成立した。15歳未満の子どもの臓器提供を禁じた現行法の年齢制限を撤廃し、国内での子どもの移植に道を開くとともに、脳死を初めて法律で「人の死」と位置づけた。ただ、死の定義変更には強い慎重論が残る。このため、A案提出者は審議の中で「『脳死は人の死』は、移植医療時に限定される」と答弁し、配慮を示した。



(中略)



◆成立した法律骨子◆



(1)死亡者の意思が不明で遺族が書面で承諾していれば、医師は死体(脳死した者の身体を含む)から臓器を摘出できる



(2)本人の意思が不明でも、家族が書面で承諾していれば医師は脳死判定できる



(3)親族に臓器を優先提供する意思を書面で表示できる



(4)政府は虐待児から臓器が提供されないようにする





臓器移植法案が改正されましたぬ。

今回の都議選がはっきりと示したが、自民党が第一党から陥落する事態は以前より最も有力なシナリオだった。

僕も一応都議選行ってきましたよ。夜の特集番組での民主の猛攻に唖然としたけど。



いずれにせよ、国会に政権交代の波紋が生じる前に改正法案の可決が急がれたことは想像に難くない。多くの識者が報道番組で「議論が尽くされていない」と語るがこの法案の成立が多くの人々の感情の渦を生むことになるというのは確かな事実だ。



患者本人の意思を最優先するという以前の法案から、家族の意思があれば臓器移植が可能という内容に改正されたというのが今回の最重要論点。



従来の法案では子供に適したサイズの臓器が見つかりにくく、なおかつ本人がドナーカードなどによる臓器移植の意思を示していることが極々稀であったことから、移植の必要な病にかかった子供を持つ親たちは涙を飲むしかなかった。

今回の法案改正は彼らにとって子供の命を繋ぎとめる一筋の希望の糸となる。



一方で脳死の患者を持つ家族は、患者の息を止めるか否かの決断を迫られることとなる。

本人が移植の意思を示さぬままに意識を失い、家族の間で移植に応じる決断をした場合、たとえその行為が一つの命を救うことに繋がるとしても、家族の心の中にはうつろな戸惑いが残る場合もあるだろう。



また、医療の現場で実際に移植に携わる医師の心にも影響を与えるかもしれない。以前はドナーカードによる患者の意思が全てを決めていただけに、移植行為もスムーズに行われていた。しかしこれからは家族の意思も関係してくる。懸命に重体の患者の救命にあたっていたのに、急に移植の道を提示せざるをえない状況も、時には起こりうる。

命は天秤に載せて計ることのできないものだが、時に現場では時間がそれを許さないこともあるだろう。そんな時にどのような判断を下すのか。公平に全ての命を救う仕事である医師も、一人の人間だから究極の生死観は様々だろう。命のやりとりがより濃密になる移植法案が反映された医療の現場にも、これから様々な煩悶が生まれるかもしれない。









もう一つの法律のホットトピックとして6月半ばに成立した海賊対処法案がある。

日本が反人道的行為を働く海賊退治に加わる!!といえば聞こえはいいが、実際は日本が自衛のために保持している軍事力を海外に派遣することが合法の下に可能になったということでもある。



かつての湾岸戦争時に自民党内で、普通の国家として軍事力を派遣することで国際貢献するべきだという小沢一郎と9条の遵守に徹したYKKの間に対立が生じ、以降の小沢が二大政党化の引き金を引く存在となってから20年弱が経過した。



以前は冷戦という二項対立の下、安全保障をアメリカに任せきりにしていた日本を取り巻く状況はこの20年で大きく変化した。アメリカVSソ連という構造は崩れ、グローバリゼーションの歪みから生まれた様々な国同士の対立が幾度と無く世界を揺るがすこととなった。

日本は「アメリカ陣営の一つの国」としてではなく「地球上の一つの国」として意見を示すことを常に求められる中逡巡を繰り返し、金銭的援助や後方支援など、様々な方策が実行されてきた。



そのような軍事力に関する議論に対する一つの答えが、今回の対処法案ともいえる。

この法案に関する自民、民主両党の考え方は、武器使用の基準などに関する議論が尽くされないままにとにもかくにも可決が急がれたという法案の成立過程にも垣間見える。結果として皮肉にも日本は普通の国家への道を半歩ほど歩み始めた。



過激な防衛族系の議員の間からは、度々領海を侵犯する北朝鮮の不審船を海賊認定して威嚇射撃すべきという声も上がっているという。

敗戦や占領などの様々な経緯を経ているとはいえ、世界的にも貴重な平和宣言を表明している憲法を持っている国としてこれからどのような国際協調をしていくのか。これからも日本国民の一人として注目していく必要がある。