新・時の軌跡~yassuiのブログ~

旅の話、飯の話、リビドーの話。

近鉄アーバンライナーより

長距離列車の中での最上の過ごし方があるとすれば、それは読書と、車窓を堪能することだと思う。

日常で目の前を真っ黒に覆い尽くす仕事のことをさっぱり忘れて、本の中の世界におとなしく身をゆだねて、静かに心を震わせればいい。

あとがきを読み終わったら眼前を淡々と流れゆく景色を眺めればいい。
自分の個人の人生の過去を後ろに去りゆく眺めになぞらえて、未来に進む自分の身の振り方、心の行方を彼方にぼんやりと描けばいい。

列車は街を過ぎ、畑を通り抜け、渓谷を渡り、トンネルをくぐって、山を越えて行く。
どんな情景の中にも、人々の当たり前の生活の残滓が漂い、自分のいる世界が部屋と職場の往復だけではないことに救われる気持ちになる。

都市でぼやけた自分の輪郭が生き返っていく。
魂の呼吸を感じながらも、これは一時の感傷に過ぎないと、いつもの感受性をないがしろにする嫌な自分の揶揄が始まり目が覚める。
そしてまた悲しいほど素直に、月曜日から僕はまた街に戻るはずなんだ。