新・時の軌跡~yassuiのブログ~

旅の話、飯の話、リビドーの話。

国境の南、太陽の西

村上春樹の、「国境の南、太陽の西」を読んだ。テスト中なのに(笑)テスト期間というのは部屋の掃除をしたくなる。その途中、文化祭の古本市で買って、なんとなく部屋の片隅においてあったこの本を手にとると、やめられなくなってしまった。





例によって、主人公は「僕」。この作品はひとりっこをコンプレックスにした彼の少年時代から始まる。ひとりっことは親に甘やかされ、ひ弱で、おそろしくわがままだという世間の定説がある。ひとりっこが珍しくない今ではさほど影響の強いものではないが、彼の子供時代、学校にはひとりっこは二人しかおらず、それはまさに自然の摂理のようなものだった。





もうひとりのひとりっこは女の子で、島本さんといい、足の悪い転校生だった。そのため彼女の精神的負担は大きかったが、その分彼女はずっとタフでクールだった。彼女はいじめられたりからかわれることは決してなかったが。友達と呼べる相手は一人もいなかった。





彼と島本さんは家が近いことから仲良くなり、お互いに惹かれあい、非常に親密な時間を過ごす。しかし二人は別の中学に進むと互いに拒否されることを恐れ、疎遠になってしまう。彼は水泳を初め、自分の体の急激な変化を成長という観点より変貌という観点から眺め、ひ弱だった自分の体が頑丈になることを楽しんだ。





高校時代、彼は非常に好き合っていたガールフレンドを最悪の形で傷つけてしまう。そのことにより、彼は自分はどこまでいっても本質的に変わることはできないと感じひどい不安におそわれる。

男として立派に成長した彼は大学、社会人と何人かのガールフレンドと付き合ったが、上手くいく相手はおらず、自分が何を求めているのかさえわからなくなっていた。ぱっとしない企業で個性を殺しながら働く彼は次第に引きこもるように孤独な毎日を送るようになる。



30になり彼はようやく彼の求めていた女性と出会い、結婚することとなる。彼女は平凡な顔立ちだったが、彼は理不尽なくらい激しく彼女に惹かれた。

彼女の父親は中堅建設会社の社長で、会社のもつ空きビルで、「僕」に何か商売をやらないかと勧める。



彼は今まで押し殺してきた想像力を開放し、上品なジャズを流すバーを始める。店は予想を遥かに越えて繁盛し、僕は青山に4LDKのマンションを買い、妻と二人の娘と幸せな日々を送ることができた。しかしある日…(続きはまた明日)