新・時の軌跡~yassuiのブログ~

旅の話、飯の話、リビドーの話。

原田宗典は面白い!

最近日々の雑感ばかりでおもんないよ〜!たまにはレビューかけや!という声を聞いたので久しぶりに作ってみようかブックレビュー。

というか作家レビュー。

小説家、原田宗典。この名前を聞いて、知っている人は思わずにやりとしてしまうはずだ。僕自身も2、3年前に野球部の友達から紹介されて、初めて原田アニキの本を読んでみたが、極めて面白い。中途ハンパなギャグ漫画の100倍面白い。途中にやけたりふきだしたりしてしまうので、電車の中で読めないほど面白い。

この本マジ面白いよ〜、と母親に見せると、そんな本読んでるの、と呆れられると同時に意外な事実が明らかになった。原田サンは僕がめちゃめちゃ幼いころ一時住んでいた早稲田のマンションのご近所さんだったらしいのだ。幼い僕は原田サンの娘サンと遊んでいたとか。この話を聞きますます原田宗典に共感が湧いた僕でした。

閑話休題

レビューにもどろう。数ある作品の中から僕が持っているものを1冊。「17歳だった!」〜紹介文…本の背表紙より〜17歳。楽しくてムチャムチャ充実している一方で不満だらけ。自意識過剰で恥ずかしくって、キュートな愛すべき時代。思い出すたび胸の奥が甘く疼く、ハラダ君の愉快でウツクシイ高校青春記(以上、一部略)

中身はエロあり不良あり不満あり背伸びありの青春記。とこれまでは普通の青春小説と似てるんじゃないか?と思うだろう。

では何故この本が面白いのか。やはりそれは描かれている「青春」像が何箇所か必ず、読者の青春時代と被るからだ。これは原田宗典の作品すべてに共通しているポイントに繋がる。すなわちそれは広範囲にわたる豊富な語彙を生かした絶妙な比喩と、それに対する読者の共感だ。

例えば、授業中原田少年がウンコに行きたくなってしまった場面。「痛みは徐々に大きなウネリとなって、渦を巻き始めた。まるで腹の中が鳴門の渦潮になったような具合である。うううっ…これはいかん…(中略)…こみあげてくる便意は、耐え忍ぶことができないのである。腹の中で痛みと便意がよりあわさって一本の太い綱となり、ソレ引けヤレ引けと、強烈な力で綱引きが始まる。…出してけれ〜、出してけれやあ〜…と声無き声が響き、肛門近辺が狂おしくノックされる。…僕は額に青筋を立てて尻に力を込め、殺到する烏合の輩を押し返す。まるで国会議事堂に押し寄せる学生運動の群と、機動隊との攻防戦のようである。むろんこの場合、ウンチョスが学生運動の群で、肛門括約筋が機動隊である。ぼくは必死で肛門近辺に

機動隊の精鋭部隊をおしげもなく投入し、わあわあと押し寄せる学生運動の群を、こんにゃろ、こんにゃろ!と撃退した。しかし敵もさるもの、我が精鋭部隊の間隙をぬって、横っちょからとぼけた顔をして、ちょっとすいませ〜ん、などと顔を出そうとする。蟻一匹も通してはならーん!と命令をうけている精鋭部隊はこれを必死で押し返す。さあ学生が勝つか機動隊が勝つか学生か機動隊か学生か機動隊かッ………

ページに印刷された活字を読めばこの面白さは倍増するのだが、授業中便意をもよおした時の学生の気持ちはまさにこの通り(笑)

この人は早稲田の一文演劇科卒、と表紙に書いてある。演劇とは、音声と体現と台詞で観客を共感させることでその劇の世界に引き込み、考えさせるものだと思う。よって、ある程度までは脚本家の思うところがあってもその意図は俳優の演技、観客の解釈によって変わり、基本的には自由な発想に基づいた芸術だと思う。原田サンはこの演劇を学んだからこれだけ読者の共感を意のままにするエンターテイメント性に溢れた表現がひょいひょいと出てくるんじゃないかな?と僕は自分勝手に深読みしたりしている。ちなみに原田サンは脚本家としても活動している。

ほかにも、役に立たなさそうな道具達について語るエッセイや、日々の雑感を書き綴ったものなどの短編集が主だが、一冊長編がある。「平成トムソーヤ」これは新宿にまつわる少年少女の静かな戦い?を描いた小説で、僕にはなじみの深い新宿近辺の地名が続々と出てくる。

まあ好みもあるかもしれないが、がり勉に走らず高校生活を普通に謳歌している人が読めば、なにかしら、いやかなりの共感を得られるはずである。是非ご一読あれ。