心を豊かにするための試みその1
君の姿が目に映れば 僕の心のオルゴールが鳴り始める。
だけど そのちぐはぐな音色は君の笑顔を曇らせる。
君の笑顔を見てしまうと 僕は君のことしか考えられなくなる。
だけど 君が僕のことを考えることはない。
君とふと視線がぶつかると たゆたう僕の心が君の水晶体に映ってしまいそうで
僕は思わず下を向いてしまう。
そして 君の視線は何事もなかったかのように流れていってしまう。
でも
君は
そこまで手帳に書いて、Kはペンを床に置いた。
5月のうららかな陽光が降り注ぐKの部屋には、限りなく優しい匂いが漂いKを包んだ。Kは限りなく幸せだった。Kの意識は静かに薄れていった。
その時近所の公園では少年達が野球を楽しんでいたし、カップルは愛をささやき合っていた。初老の男性はベンチでうとうとしていたし、老婆は犬を散歩させていた。世界中が日曜日だった。
そしてKは少女の死体の上に横たわり、その目を二度と開くことはなかった。